風の旅ビトの感想です。ネタバレ的なものが十二分に含まれます。未プレイの方は下のYoutubeだけクリックして見てぜひゲームを買ってプレイしてください。体験版もあります。

最近はDLオンリーのインディーゲームが盛り上がっているように感じます。低価格であっても、そのゲーム内容にあったグラフィックや斬新なアイディア、プレイのしやすさ、Coopのおもしろさなど様々なものが作られ、ひろくプレイされているように思います。
この『風の旅ビト』(原題:Journey)はthatgamecompanyによって作られたPS3のゲームです。当初は1200円でDLオンリーで売られていました。国内では輸入盤のみの販売ですが、thatgamecompanyによる他のゲームとあわせてパッケージで売っているものも発売されています。
わたしはトレイラーだけ見て「これもゆったりしたFloweryのようなゲームかな?」と思っていたのですが実際にプレイしてみたら違って驚きました。そしてそのまま最後までプレイして、ラストはよくわからないまま感動で少し泣いてしまいました。究極の雰囲気ゲーと言われるかもしれませんが、この感動は本当に近年稀に見ぬものだと思います。

簡単に説明すると、文字や言葉がほとんど登場しない中で、物語・物語世界を体感できるゲームです。プレイヤーは説明のないまま知らない世界に投げ出されますが、表示されるまま・思うがままに進むだけでゲームは進行していきます。タイトルの旅ビトとはなんなのか明白な答えが提示されるわけではありませんが、プレイヤーは個々にゲーム世界や物語について感じ、考えることとなるゲームだと思います。



Story

ゲームを起動して始めると、あなたはひとりでぽつんと砂漠に立っています。画面にはコントローラーの絵が浮き上がり、コントローラーを左右に倒すことでカメラを移動させられることや、スティックを倒してキャラクターを動かすことがわかります。
あたりは一面の砂漠です。遠くには山と太陽が見えます。遠くの山はてっぺんに上からまっすぐ線が入ったような切れ目が入った変わった形をしてます。近くの小高い砂山の上になにかよくわからないオブジェクトが見えます。何かあるのかと思い砂の坂を上がっていくといつの間にか自動でカメラとキャラクターが動き、てっぺんに上がると正面には遠くの大きな山、そして壮大で美しい音楽とともにタイトルが現れます。
その後もとくに何か説明がなされるわけではありません。あなたはよくわからないままゲームを進めます。移動とカメラ移動の他には、少しのジャンプと音を鳴らすことくらいしかできません。それでも十分に探索やアイテム集めをすることができるので、あなたは自分ができることを見つけて先に進んでいきます。
進んでいくと怖い場面もあります。どうすることもできない敵を相手に、あなたには隠れて進むことしかできません。廃墟の中をさまよったり、知らない旅ビトと一緒に進んだり、高次の尊い存在(のように思えるもの)と出会ったり、石碑に浮かび上がる壁画のようなものから何かを読み取ったり、そんなことをしながら進み、最初に見た遠くの山のてっぺんに自分が近づいていってることがわかります。
山の上の方ともなると雪が深く、歩いているだけであなたの頭や肩、マントは白く雪に覆われていってしまいます。寒さで力がなくなりそうになりながらも、ひたすら山を目指して歩いていきます。猛吹雪のなかで、力を失い、歩く速度が落ち、白以外の景色が見えなくなり、とうとう一歩を踏み出す力さえ残らず…


Graphics

上の映像(HDで見てください)でもわかるように、グラフィックはとても美しいです。砂漠のシーンは砂の一粒一粒が太陽の光を反射し、旅ビトが通った跡も綺麗に残ります。ゲーム内世界は砂漠だけでなく、変化に富んだステージが待ち受けており、どれも光や風、砂、雪の描写が美しく、色彩やカメラワークもうまく作りこまれています。遠景はどこか色のついた水墨画のようなものを彷彿とさせます。空気や気温、時刻の変化や”異質な世界にいる”という感じがよく伝わってきます。
プレイヤーが自由に探索できる間はどこから見ても絵になる世界であるし、ほんの一部のムービーシーンや導入のシーンでのカメラが固定されたカットも素晴らしく美しいです。これはグラフィックに限りませんが、前後の流れや緩急の付け方による見せ方はとても映画的で効果のあるものとなっています。


Gameplay

Storyのところに書いたようにできる事自体はとても少なく、白いオーブを集めることで滞空時間の増える飛行(ジャンプ)と、ホワンというかんじの音を出すこと、あとはスティックでの移動くらいです。ですが、マップの中にそれらの行動によって作用するギミックがいくつか存在するので、退屈であるというわけではないです。またグラフィックで触れた「緩急」ですが、これは操作の中にも存在します。
例えば、砂の上を歩く時です。比較的平らなところでも、ざっざっと砂の上を歩くようなちょっとした重み?のようなものがあるように感じます。それが坂道を登るとなると一歩一歩砂の中を踏みしめるように遅い動作になり、序盤の飛行での移動がしにくい時には少しストレスになってしまうこともあります。しかし、いったん砂山の上にたどり着き、山を降りるときはざざーっと一気に斜面を滑り降りることができるのです。またギミックをといたあとにできた布?の橋の上を滑るときも、その時だけ音楽が変わってすっと動くことに更に爽快感がプラスされます。このちょっとのストレスによって爽快感が得られ、ゲームプレイを単調ではなくしているように思います。
音楽が大きな効果を与えているところもあります。盛り上がる場所、落ち着く場所、緊張する場所など、ゆったりとした中ではらはらドキドキを与えてくれます。良すぎてゲームを購入した次の日にiTunesでアルバム買いました。750円です。お買い得ですね。




ムービー主体で置いて行かれるわけでも、アクションや難解な謎解きでゲーム部分をやりこんだり作業をしたりすることはありません。ただ降り立った世界で気になった方へ行き、なにかをやってみてなにかを得て…という、自分が主体的に関わっていったことが決して無駄にならないというか、作業感がないというか…フィードバックがこれまでにないかんじだったのかな?全部が自分のゲームの物語を構成しているのではと思いました。ゲーム世界で自分の物語を歩んでいくことができる、この一回のゲーム体験で一つの人生を歩むようなゲームです。


物語の解釈について。
白くて大きな旅ビトさんたちから考えると、プレイヤーキャラクターの旅ビトは彼らの宗教においての巡礼の旅を、山のてっぺんに向けて行なっているように思えます。舞台は遠い昔に滅んだ文明社会のあとで、道中で白い旅人に見せられる壁画は過去の事のような未来の事のような、どちらとも取れそうな感じです。最初に見た山の頂上からの光が、ラストで「プレイヤーキャラクターもその光になるんだ」とわかることからも、この巡礼の旅は何度も繰り返される試練?のような気もします。(でもだとしたらあの光はどこにいって何になるんだろうとか、何度もやってどうすんのとかわかりませんけど)あの光がまたどこか落ちた先で新たな生命になる、輪廻転生のようにも考えられるかなと思いました。
それより気になるのは生死です。生死ではなくとも、チャプターの変わり目に会うことのできる大きくて白い旅ビトさんは、明らかにプレイヤーキャラクターの旅ビトさんとは違うし、会っている場所もまたどこか違う場所・次元のように感じられました。その違いが生と死であるとは限りませんが、何らかの線引はできるんじゃないでしょうか。そして、雪山ののちの高彩度の鮮やかな山の頂までの道ですが、あれは力尽きたあとに白い旅ビトさんに蘇生してもらったというよりは、あの力尽きた後に(仮に)魂だけがたどり着ける境地?のようなものに感じられました。滝登りのモチーフはやはり高次のものに変化して天に登ることを表しているんじゃ?みたいな…
ともかくよくわからないんですがなんか最後の雪山→次の滝登りのところでは死をあらわしているように感じられて、しかもそれがとても清涼で爽やかな死だからこそなにか心に来るものがあるのではないだろうか、と考えています。

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