11/17に学習院大学で行われた講演・シンポジウム「BDにおける身体」を聞きに行ってきました。



講演「バンド・デシネの発明家にして理論化テプフェール――顔と線」

第一部はブノワ・ペータース氏によるロドルフ・テプフェールについての講演でした。ペータース先生はマンガの理論やタンタンなどの作品について専門的に研究されておられるようで(恥ずかしながら私は『闇の国々』の原作の人だ!ということしか知りませんでした…)、今回テプフェールについて、彼自身のことだけでなく、彼の作品が初めて行ったことや、それに関連するマンガ理論についてのお話をしてくださいました。
ペータース先生は講義のはじめに「テプフェールがマンガの祖であると主張したい」とおっしゃりました。日本でもなくアメリカでもなく、マンガの源流はスイス・ジュネーブ生まれのテプフェールにあるということです。コマが連続してストーリーを語ること、テプフェールのテキストと絵の関係性、絵の中に動きのあること(映画が発明されるずっと前にテプフェールはそれを表現していた)、最初のマンガの理論家であること…などなど、とてもおもしろいお話でした。14時に始まって15時半までが時間だったのですが、もっとずっと聞いていたかったです。

講演の中で、コマ(あるいはページ)内での視線の動きに合わせた絵についての言及がありました。これはマンガを描いたことのある人なら誰もが考えることだと思える、マンガを描く上でとても基礎的なことです。テプフェールがすごいのは、今では当たり前のフォーマットとされるこのマンガ表現を生み出したことということなのかな、と思いました。テプフェールの絵は、アカデミックな動きのない絵画とは異なる、動きのある絵です。絵画が一枚で何かを表現するものであるのに対し、テプフェールの作品の一コマの絵を見ただけでは、それが何を伝えようとしているのかわかりません。コマに付属するテキストを読むことで何が行われているのか(何が行われようとしているのか)がわかります。そしてそのようなコマの連続を読み進めることによって読者はその作品が何を表現しているのかやっとわかるようになります。
視線の動きに戻りますが、テプフェールの作品はフランス語でテキストが書かれているために左から右へと進みます。テキストが縦書で右から左へと行を続けて書く日本のマンガは、右から左へ進みます。このため、わたしはずっとマンガ作品はその国の言語の進む方向でマンガの進む方向も変わると思っていたのですが、夏目先生曰く韓国や香港(だったっけ…?)において、言語は日本と同じように右から左へ進むのに、マンガは左から右へと進むということでした。なんでなんだろう。

写真撮影は禁止されていたのでメモを取りながら絵を描いてみたんですが絵は禁止って言ってなかったし大丈夫かな……?

ペンシル氏の一コマをざざっと真似て描いてみたものです。風に吹かれて帽子を飛ばされてしまうペンシル氏です。その帽子を飛ばしてしまう風が下の図のような線で描かれていて、こういった今でも使うようなマンガ表現はいつからあるんだろうかなと気になりました。

ざざっと描いたので上のものより更に見難いですが、講演の最後のほうで紹介された風車と豚の作品です。真ん中のコマでは風車がグルグルと回っている動きが描かれていました。右のコマでは飛ばされる豚たちが、マンガ的な動きを表す線などなしで描かれていました。ぽーんと宙に投げ出された感が伝わってきます。ペータース先生はシュールだと言っていた気がします(うろ覚えです)。わたしはシュールでもあるし可愛くもあるなと感じました。左のコマでは風車の羽部分に人がしがみついたりしていたのですが、それもちょっと可愛いというかおもしろいなと思いました。

テプフェールの簡素だけれど特徴を捉えた人物の描き方や、その絵がテプフェールの作品を語ることにとても合っていたこと、そしてそんな絵とテキストの関係性・区切られた絵(場面?)がどんどんと続いていく事、考えたいことがたくさんでてきました。ゲーテの「何度も人物が死んで生き返る」?みたいな自意識の連続性というか、人物が繰り返し描かれることによるキャラクターの成立とかもとてもおもしろそうだなと感じました。日本(語)でもテプフェールについて書かれたものがいくつか手に入るらしいので、もっと色々読んでみようと思います。またペータース先生のこういったお話を聞きたいです。通訳の方は本当に大変なお仕事だと思いますが……。マンガ理論の著作とか日本語で読めるものはあるのかな?



シンポジウム「BD、マンガと身体性」

第二部では、ペータース先生、スクイテン先生、大友先生、夏目先生の4人によるシンポジウムでした。
一番初めにペータース先生とスクイテン先生が一緒に作業をしているところを写した映像を見ました。シーツをつかみながら起きる男のコマをどういう表現(ポーズや構図)で描くかということを熟考しておられ、何度も描いては「いやこれはちょっと変だな」「こっちのほうがより伝わりやすい」と描き直していました。お二方はこんなに時間をかけてひとつのコマを描くのはあまりない、ちょうどそういうところを撮られただけだと言っていました。一番いい方法を探っていく姿勢は本当にすごいと思います。人それぞれかもしれませんが、私はずっと絵を描いているのは大変だし、楽しくても絶対途中で疲れてしまいます。一発目で最善のものを描き表すこともできるだろうし、こうやって何度も実際に描いて、探っていこうとする過程を見ることができてよかったと思います。
その後のお話も興味深いことばかりだったのですが(マンガを読む時間の違い・情報量・一コマに流れる時間の違いなど)なんかつかれたのでまた今度書けたらいいなと思います。

Leave a Reply